シロアリ対策のホウ酸処理と農薬系、子どもがいる家ではどう考える?

和室の床下点検口をのぞくパパと、少し離れて見るママと子どもの絵

子どもが床で過ごす時間の長い家ほど、床下に使う薬剤のことは気になるものです。ホウ酸系と農薬系の違いを、水への強さ、保証の中身、30年で処理する回数から、公開されている資料で確かめて整理します。

最終確認日 更新

先に結論

  • 農薬系は床下の土と土台まわりの木を処理し、業界団体の標準仕様書では5年を目途に再処理します。
  • ホウ酸系は食べたシロアリに効き、ほとんど蒸発しない一方、水に溶けやすく、ぬれない木に使う前提の薬剤です。
  • 子どもがいる家では、どちらでも施工の日は近づけず、余った薬剤を家に残さないのが基本。そのうえで、30年で何回処理するかと保証の中身で比べます。

効き方と弱点は、こう違う

この記事では、合成の殺虫成分を使う一般的な防蟻剤を「農薬系」と呼びます。家に使うシロアリの薬剤は、農薬のように製品ごとに法律で審査される仕組みではなく、業界団体の日本しろあり対策協会と日本木材保存協会が、効き目や安全性を審査して認定しています。

農薬系は、床下の土にまく「土壌処理」と、基礎から1mまでの土台や柱に塗ったり吹き付けたりする「木材処理」を組み合わせるのが標準です。標準仕様書では、大阪を含む北海道以外の地域は土壌処理を行う区分です。建築基準法施行令も、地面から1m以内の柱・筋かい・土台に防腐の措置と、必要に応じたシロアリ対策を求めています。

ホウ酸系は、木に塗ったり吹き付けたりして使います。ホウ酸は蒸気圧がごく小さくほとんど蒸発しない一方、水には100mLに5.6gと溶けやすい物質です。米国農務省の木材ハンドブックは、ぬれから守られた地面より上の木に使うもので、その条件ならシロアリによく効くと説明しています。

比べる点農薬系ホウ酸系
処理する所床下の土と、基礎から1mまでの木木だけ(土には使えない)
効き方食べても触れても効く食べると効く
気をつける点5年を目途に再処理ぬれると溶け出す

日本しろあり対策協会の標準仕様書と見解、米国農務省の資料からまとめました。

ホウ酸系の扱いは、2つの団体で分かれています。日本しろあり対策協会は2019年6月の見解で、触れて効く力が期待できず建物全体を守るとは言えないとして、認定したホウ酸系の薬剤はないとしています。日本木材保存協会は、雨風から守られ地面に触れない木に使うという、用途を限った試験でホウ酸系の薬剤を認定しています。

出典:標準仕様書・協会の見解・施行令・モデルSDS・木材ハンドブック・認定品の一覧(最後の「出典」の1〜6)

「長く効く」と「長く保証される」は別の話

ホウ酸系はほとんど蒸発しないため、一度の処理で長く守れるのではと期待したくなります。ただ、保証まで含めて見ると、話は少し変わります。ホウ酸系の薬剤の一つについて、メーカーの保証書類(2023年8月版)を読むと、新築の一戸建てを対象に、次の決まりでした。

保証点検・やり直しの条件
5年定期点検なし
10年5年目に定期点検
30年新築時に別の薬剤で外周の土壌処理。10年目と20年目に、床下への噴霧と外周の土壌処理

5年・10年の保証は、終わる前に再施工すれば1回に限り5年延長できます。30年の保証は1階の床面積が100㎡以内の新築が対象です。補償はどれも修復費用で、上限300万円(免責3万円)です。

見落としやすいのは、保証を受ける相手です。この書類では、保証を受けるのは施工した業者で、建築会社や建物の所有者に対して保証するものではないと書かれています。処理した木が雨水や漏水、著しい結露で水にさらされた経歴があると、対象から外れます。

この書類には、保証の内容が予告なく変わることがあるとも書かれています。農薬系でもホウ酸系でも、保証書の見本を見せてもらい、「誰が・何年・どんな条件で直してくれるのか」を確かめておくと安心です。

出典:メーカーの保証書類(最後の「出典」の7)

費用は「30年で何回か」で比べる

費用は1回の金額だけでなく、子どもが大人になった後まで見通して、30年ほどで何回処理するかで比べると、違いが見えやすくなります。

進め方30年の処理前提
農薬系6回新築時と5・10・15・20・25年目
ホウ酸系(30年保証の例)3回新築時と10・20年目。土壌処理も含む
ホウ酸系(保証なし)決まりなし新築時に1回。その後の公的な目安はない。木がぬれないことが前提

標準仕様書の「5年を目途」と、上の保証書類の決まりから数えました。ホウ酸系の効き目が何年続くかを示す公的な資料は、見つけられませんでした。

1回の費用は家の広さや工法、会社によって変わり、公的な資料で確かめられる相場も見つかりませんでした。見積もりは「1回の額×30年の回数+点検の費用」で並べます。再処理や点検は床下に人が入って行うので、床下点検口があるかも確かめておきます。

出典:標準仕様書・メーカーの保証書類(最後の「出典」の1・7)

書いている私(RYU)の場合

大阪で築50年ほどの戸建てをフルリノベした時、打ち合わせの最初の段階で、シロアリ対策はホウ酸処理で、とわが家がお願いした工務店に伝えました。30年先までの手入れの手間と費用を、できるだけ減らしたいと考えて素材を選んでいたからです。

ただ、この記事のために資料を読み直すと、ホウ酸系でも保証を続けるには再処理が条件で、保証を付けなければ何年効くかの公的な目安もないことが分かりました。木がぬれない状態を保てるよう、雨漏りや水漏れに早く気づける家にしておくことまで、セットで考えたいと思っています。

子どもがいる家で、気をつけたいこと

国は室内の空気について化学物質ごとの指針値を決めていて、シロアリ用に使われてきた成分も入っています。そのひとつのクロルピリホスは、小児の指針値が通常の10分の1と厳しく、2003年7月1日以降に着工した居室のある建物では、これを加えた建材は使えません。施工の前に、薬剤の名前と認定を受けた製品かを確かめておきましょう。

住みながら処理する時について、標準仕様書は、施工内容と薬剤を住む人に十分説明すること、施工中は関係者以外が入らないよう表示すること、ペットや観葉植物を移すことを定めています。作業の日は子どもが現場や薬剤に近づかないよう、過ごし方を前もって決めておくと落ち着いて迎えられます。

ホウ酸は天然の鉱物から作られますが、口に入れれば害のある物質です。日本中毒情報センターは、床に置いたホウ酸団子を子どもがすぐ見つけて口に入れることを意識し、子どもがいる所では使わないよう呼びかけています。どちらの薬剤でも、余った薬剤や容器を家に残さないよう頼んでおくと安心です。

標準仕様書は、シロアリが活動しやすい場所として水回りを挙げ、事前に調べる所に雨漏りする場所も入れています。ホウ酸系は特に、ぬれると成分が溶け出します。屋根の手入れは屋根と断熱の記事に、外壁は外壁の記事にまとめています。

出典:標準仕様書・モデルSDS・木材ハンドブック・大阪府・国土交通省・日本中毒情報センター(最後の「出典」の1・4・5・8〜10)

書いた人

子育て家族の住まいを、30年のお金で考える。

RYU

築50年ほどの戸建てを買い、自然素材でリノベーションした2児の父です。

  • 工務店と打ち合わせを重ねて、フルリノベーション
  • 窓の断熱リフォームで、国の補助金を活用
  • 数字は国や自治体、メーカーの資料で確認

建築士・宅地建物取引士ではありません。工事や契約は、工務店や専門家に確かめてください。

次に読む

出典(一次資料10件・2026年10月21日に確認)
  1. 日本しろあり対策協会『防除施工標準仕様書』令和7年10月版(1・2・3・6・7・10・13頁/2026年10月21日確認)
  2. 日本しろあり対策協会『ホウ酸系防蟻・防腐製剤について』2019年6月(1〜3頁/2026年10月21日確認)
  3. e-Gov法令検索『建築基準法施行令』(第49条第2項/2026年10月21日確認)
  4. 厚生労働省 職場のあんぜんサイト『モデルSDS ホウ酸』(2・9・11項/2026年10月21日確認)
  5. U.S. Forest Service『Wood handbook』FPL-GTR-282(15-5頁 Inorganic Boron/2026年10月21日確認)
  6. 日本木材保存協会『認定薬剤、認定規程等』(認定品の一覧 2026年No.2・木材防腐・防蟻剤/2026年10月21日確認)
  7. エコパウダー社のホウ酸系防蟻剤『新性能保証 保証書類一式』2023年8月版(販売店のサイトに掲載・3・4・5・8・20〜22頁/2026年10月21日確認)
  8. 大阪府『化学物質濃度指針値』(クロルピリホスの用途と指針値/2026年10月21日確認)
  9. 国土交通省『建築基準法に基づくシックハウス対策について』(クロルピリホスに関する規制・共通事項/2026年10月21日確認)
  10. 日本中毒情報センター『子ども編 家庭内での中毒事故防止チェックリスト』(1.使用中は子どもを意識する/2026年10月21日確認)